野菜づくりから、人を育てる農業へ 吉良有機農園

「農業を人づくりに活かしたいんですよ。美味しい野菜を育てることだけでなく、農業を人を育てる機会にしたいと思っています。」

こうお話されるのは、吉良有機農園を運営される吉良佳晃さん。年間50種類以上の野菜、野草を含めると年間60種類ほどつくられています。多種多様な野菜をつくるなかで、吉良さんは農業に新しい見方で取り組まれているようです。

 

丹波ブランドの魅力とは

 

丹波篠山市で農業を営まれる吉良さんは、丹波ブランドの魅力についてこう話されます。

「丹波地域は土や気候が良いので、美味しい農産物ができる条件が整っており、歴史も長いですね。それが消費者にとっては安心感につながっていると思います。生産者にとっても丹波地域で農業を営めることは、農産物への出来に対して安心があります。」

阪神淡路大震災を機に農業に転身した父から継がれた吉良さん。農産物はレストランに提供されることがほとんどだそうです。

 

 

「父は家族が安心・安全に食べられるものを意識して、化学肥料、農薬に頼らない野菜づくりを実践してきました。当初は一般の家庭向けでしたが、料理人との関係ができはじめると、新しい野菜、新しい食べ方を模索していく中で、畑の中が変わり、野草まで視野が広がっていきました。本当に料理人の方々に育てていただいたように思っています。」

「丹波ブランドの中で、『食』という農業の大きな役割の一端をこれからも発展させていきたいですね。」

 

 

子どものやる気を育てる農環境

 

自然環境の良さが生む丹波ブランド。その土台があるからこそ、吉良さんは次なる土台づくりをしていきたいそうです。

「豊かな自然環境も先人の積み重ねがあったからこそです。高齢化や担い手不足で農家が減り、耕作放棄地が増えつつありますが、美味しい野菜づくりを続けていくためにも、農業のもう一つの役割である自然環境を守り続けていく新しい循環を創りあげていく必要があります。」

「そこで、農業を違うとらえ方で見たいなと。農業を人を育てる機会と考え、実践していきたいと思っています。」

まだ小さく取り組み始めたばかりだそうですが、都市部の学童保育と連携し、休耕田や里山の中で活動する場を提供されています。

 

 

「子どもの発達に里山という環境が活かせないかという想いがスタートです。学校のように決められた授業でなく、遊びを通じた学びですね。」

「作物栽培には不向きで放置された休耕田、それに続くこれまた放置された里山は、いわば生きたキャンバスです。新たな人と自然との関係を築く実験場にもなりえる。薪を割って、お昼ご飯づくりから始めて、あとは自由に遊ぶ。目に見えない里山のルールをどう身につけてもらうかという難しい課題はありますが、基地づくりや生き物探しなど、動き回っていますね。」

 

 

農業をキャリアステップの一つに

 

さらに、吉良さんは農業をキャリアステップの一つとして考えてもらえるようにしたいとお話されます。

「農業をキャリアの中間地点として考えてもらえるようにしたいです。今は農業というのはキャリアの終着点として考えられるケースがほとんどだと思います。それはなぜか?一つは農業の経験を次に活かせる道がみえにくいからです。」

「一方で、神戸大学・丹波篠山市農村イノベーションラボにて開校されているイノベーターズスクールで農業 CBL を担当したときに、受講生が必ずしも就農を目指す人ばかりではないんですね。地域農業を食糧生産工場でない、新たな価値や資源活用の在り方を見つめなおす時代にきているのではないかと感じました。」

 

 

「農業は”リソースをどう活かすか”、”誰に対してどんなの農産物をつくるのか”、”どう販路を開拓するのか”など収支や資源のバランスを見ながら仕事を進めるという面。自然環境とどう共生していくのかという広く、息の長い視野で自分事として考え試行錯誤するという面。そういった経験を積むことで、農業以外の分野で挑戦することになっても充分に通じるようにしたいですね。」

 

農業で人を育てることに挑戦される吉良さん。まだまだ手探りな状態だそうですが、背丈にあったことを一歩ずつ、これから実証し形にしていきたいと意気込まれました。